エステティック・ライフについて
About Aesthetic Life
過去は現在を決定する。その衝撃をよく考えてみるべきなのだ。これは単に形式的なことでなく、個人的な経験からなのだ。私が年をとり、過去の出来事から遠く隔たったのに、過去それ自身が迫ってくる(ノスタルジアとかそんなものではなく!)。すでに歴史の中に葬られてしまったであろう私の若かった頃の出来事が、まるで今起ったかのようなのだ。時間と歴史はもうリニアな経験ではすまない… ギャラリー内には7人のアーティスト(まだ生きていようと既に死んでいようと)がいる。今、彼らの作品は調和している – そんな準備がこの単色の空間にはできている… ここには全て静寂が与えられている。たぶんそれはあなたが選んだ作品のそれぞれが、内省的だからである – つまり単なる物語的な意味以上のことを考えてくれるよう促しているのだ。
Amikam Toren『The pleasure of aesthetic life』展カタログより
1. エステティック / ライフ
Aesthetic / Life, 2010
1990 年代にロンドンの大学院で学んだ中根秀夫と平田星司が、現在の自分たちにとっての「Aesthetic Life/美的日常」を考える手段として「展覧会企画ユニット」を立ち上げ、2010年に第1回目の『エステティック/ライフ』展を開催する。
90 年代中頃のイギリスでは、ダミアン・ハーストやレイチェル・ホワイトリード、アニヤ・ガラッチョらに代表される若手アーティストが、社会に対する批評性の強い創作活動を繰り広げた。そんな96年に、ロンドンのショールーム・ギャラリーで『The pleasure of aesthetic life』(美的日常のよろこび)という展覧会が開催される。 前述のアニヤ・ガラッチョ他6組7名の作家による展示を企画をしたのは、平田の師でもある アミカン・トーレン(1945年エルサレム生)であり、「エステティック・ライフ」という概念は、この展覧会タイトル(トーレンの作品のタイトルでもある)から引用された。
Aesthetic / Life展より(2010年)
中根秀夫 Kinderszenen Video
2. エステティック・ライフ – オートマチック
Aesthetic Life – Automatic, 2015
2015 年には第2回展として、アミカン・トーレン(ドローイング)/ピーター・スティックランド(詩)による『ROME automatic』という一冊の本を起点に、ウエダ・リクオ、鈴木智惠、そして1994年に30歳の若さで亡くなった小林潔史と、年齢も出自も使用するメディアも異なるアーティストを繋ぐ展覧会『Aesthetic Life – Automatic』展を企画した。
- Aesthetic Life – Automatic のための覚え書き
テキスト:鎮西 芳美 (東京都現代美術館 学芸員)
ROME automatic “Bombshell”
ドローイング: Amikam Toren 詩: Peter Stickland 翻訳:平田星司
Aesthetic Life – Automatic展より(2015年)
手前:平田星司 Propagandists 2014〜2015年 海中から拾ったボトル、海綿他
奥:中根秀夫 Memories 1995年~ 青焼コピー(褪色していく)、ラミネート
小林 潔史(1965-1994)
1993.10.14 No.5774 一つではない中心から ブロンズ
1993.10.3 No.5746 白いカガミの中に映る顔 ブロンズ
1993.7.8 No.5697 腕からぬきとられていく自分 ブロンズ
1993.6.30 No.5683 ここが泉の湧き出るところだったのか ブロンズ
1993.6.29 No.5681 紫色の本の中にあるかたち ブロンズ
3. 海のプロセス−言葉をめぐる地図
Process of the Sea – Words’ Atlas, 2017
今回の『海のプロセス−言葉をめぐる地図』では井川淳子・福田尚代に参加を依頼し、エステティック・ライフ+として4名で「言葉をめぐる地図」を描くことをコンセプトとする。展覧会は「言葉」という切り口により構成され、見る者に言葉や文字をめぐる多層的な体験を促す展示になる。