福田尚代よりお知らせ

本展は、かつて表参道画廊+MUSÉE Fにて毎年開催されていた、美術評論家の故 鷹見明彦氏による企画展作家の、その後を紹介するシリーズです。同シリーズの坂口寛敏 個展(表参道画廊)と同時開催となり、レセプションは10/15(月)18:00-19:30、二つの空間をむすぶホワイエにて行います。

会期:2018年10/15(月) ~ 10/27(土) 日休
時間:12:00~19:00(最終日17:00まで)
会場:MUSÉE F 
https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/18509
http://omotesando-garo.com/index.htm 
企画:表参道画廊+MUSÉE F
協力:小出由紀子事務所

 


福田尚代ウェブサイトより転載

山のあなたの雲と幽霊

20188月 福田尚代(美術家)


 本展では、《袖の涙》シリーズの新作を発表いたします。

  《袖の涙》シリーズは、古くから和歌に詠まれてきたような、涙が沁み込み、ときに朽ちてゆく〈袖〉という媒体への共鳴から生まれました。(※)
拡張した身体であり、此岸と彼岸の境界でもある袖に触れつづける行為は、死者と遺された者との関わりに知覚をはたらかせる時間であったとも思われます。
新作では、幽霊という領域に一歩踏み込みました。衣類の袖を綿状にほぐすなかで、袖の涙から雲へ、雲から幽霊へと、修辞上の飛躍を彫刻的な手法で一息に体感することとなり、身体感覚に潜む無意識のゆくえに驚いています。
日々の生活では幽霊を信じていないにもかかわらず、制作に没頭する別の空間では圧倒的に存在してしまう、そんな美術の術についても、あらためて考えさせられます。
また、子供の頃に、遊戯や読書に親しみながら夢想していた〈アズキと幽霊〉〈ソラマメと虚構〉をめぐる物語も、ようやくささやかなかたちになろうとしています。ご高覧いただければ幸いです。

展覧会タイトルに含まれる〈山のあなた〉は、カール・ブッセの詩から引いています。幼い頃、この言葉を誤読したことにより〈彼方〉と〈貴方〉が混ざりあい、山のように遠く巨大でありながらも実体のつかめない、謎めいた存在と出逢ったのです。言葉の不思議さを味わわせてくれたこの響きには、あなたとわたしとなにものかが互いに乗り移り、遠大と極小が入れ子となった幽谷が見えないでしょうか。

(※)同シリーズには、袖に見立てたハンカチにオイルパステルを塗り込めた《袖の涙、あるいは塵をふりつもらせるための場所》、古いハンカチを用いて小さな袖を縫う《袖の涙》等があり、「Reflection:返礼榎倉康二へ」展(2015年)にて展示されました。

福田尚代《Dear Fairy & Fiction :Life Saver》
2018年 
毛糸、刺繍糸、ハンカチ 
サイズ可変

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