海のプロセス

出品作家について
About Artists


ほぼ同世代である4人は、異なる創作活動を経た今、ひとつの切実なる美術の形を提示したいと思っている。以下参考として各作家の作品の特徴について記す。

中根秀夫は、紙、ガラス、鏡などの素材を用いたインスタレーションで、社会的と個人の記憶をテーマにした批評的な作品を手がけてきた。最近では映像や写真を用い、詩人や音楽家など他分野のアーチストと積極的に関わりを持つ。平田星司と共同して美的日常をテーマにした「Aesthetic Life」というシリーズの展覧会の企画も手がけている。

平田星司は、例えば描くもの/描かれるもの、あるいは描画材/支持体のような一見対立する概念を反転させる、不条理さを伴うコンセプチュアルな行為を作品としている。素材は多岐に渡るが、その素材とリリカルな関係を持った言葉を扱うインスタレーションを特徴とする作家である。

井川淳子は、石や紙などの素材を用いた制作活動を経て、現在は銀塩写真による作品の発表を続けている。深度の深い視座を持つイメージからは「不在」の概念を抽出できるが、そこにはシャッターが切られる以前の時間と言葉が「気配」として存在する。それは例えばデュシャンの言葉「アンフラマンス」とも呼応する。

福田尚代は、独自の言葉に対する概念により創作を続ける。福田の中で「言葉」は実体があり手で触れることのできる「言葉の粒子」として世界を満たし、それは過去や未来と行き来している。バラバラにされ意味を失った言葉の粒子ひとつひとつを携え、そこから全く新しく鮮やかなイメージと連結させ世界に還元する作品を制作する。

 

Text by Hideo Nakane